彼女がどういう存在であるかを、俺は知っていた。彼女自身が知らずとも、俺は知っていた。三年前のあの日、あの場所で泣いていたのは世界できっと二人だけ。
 似たもの同士は惹かれ合う。あの日、視界の端で泣いていた君は、多分同じ様に視界の端にいたはずの俺に気付いただろうか。あの日あの場所で出会ってしまうまで、彼女のことなど殆ど記憶になかった。ただ、目があった瞬間に体を駆け抜けたあの感覚は、強い既視感。脳みそを揺さぶられ強制的に呼び起こされる記憶。

「そういえば昔、このデッキで活躍したデュエリストが、いたなって」

 一つ一つの言葉を慎重に選んで口にしたつもりであった。一つの言葉が相手を一喜一憂させる様を今まで何度も見てきたからこそ、その重みを理解していたつもりだった。それなのに、彼女との再会は望まぬ形で終わってしまった。声を紡げば紡ぐ程、彼女の顔から箔が消えた。滑り出した口を止めることは出来ない。
 思い出を語る時、全ての人が笑顔であるとは限らない。

「君、ごめんしか言わないね」

 だって、あの時の君の顔が、あまりにも悲しそうだったから。

(それでもきっと気付かぬフリをする)