ジョニィ・ジョースターの境遇だけを代わりに背負うことになる身代り主人公

(成り代わりではなく、ジョニィ・ジョースターの境遇だけを代わりに背負うことになる身代り主人公)

何が起きたのか分からなかった。
昨日買ったばかりの靴を履いてきたのがいけなかったのだろうか。そもそもちょっと背伸びをしていつもよりヒールの高いものを買ってしまったことがいけなかったのか。いや、それ以前に、自らこの日この時間に友達との予定を入れたことそれ自体が既に間違いだったのだろう。
ただ一つ言えるのは、今日、私がトンデモなくついていなかったということだ。
最後に感じたのは突然の浮遊館と、何かが弾ける感覚。

「あなたがいなければ、こんなことにならなかったのに」
「でも僕がいなければ、君はこうしてふかふかのベッドの上にいなかっただろうぜ」
「……」
「言い方が悪かったよ……本当に悪かったと思っているんだ」

目が覚めた時、私の側にいたのは見知らぬ青年だった。
なんでも、私をこんな体にしたあの銃弾は、本来彼を狙ったものだったという。ここで、「あなたに怪我がなくて良かった」等と言えるほど、私は聖人ではなかった。身内や愛する人ならまだしも、全く面識もない男のために、私は歩けなくなったのだ。
下半身不随。せっかく買ったあの靴も、もう意味のないものになってしまった。
今まで口にしたこともないような、自分でも驚くほど下品な罵り言葉が涙とともに溢れ出す。
何度謝られても、私はこの男を許すことはないだろう。一番に恨むべきは銃弾を打った犯人であるということは勿論理解していた。自分の運の悪さのせいでもあるということも、それを理解した上で彼に当り散らす行為が最低なことであるということも理解している。でも、今目の前にいるのはこの男なのだ。一番近くにいるからこそ、この感情をぶつけずにはいられない。そうでもしないと、体のなかで膨張し続ける何かで、私は破裂してしまうだろう。抑えられないのだ。私が私でなくなる。彼のせいで、私の人生が書き換えられた――。
ああ、しかも、何故。目が覚めた時に側にいたのがこいつなのだろう。父でも母でも友人でもなく、どうしてこいつが。その事実が私の痛みに追い打ちをかける。
“もし彼がここにいなかったなら”、私は彼のことなど知らないまま、犯人だけを恨んで生きていくはずだったのに!

「お金のことなら心配しないでくれ。僕が一生涯世話をするよ」
「……お金だけ置いていって」
「そんなつれないこと言うなよ」
「慰謝料ってやつよ! それが、普通のことでしょ……!」
「僕は調子に乗りすぎていたんだ。世界をなめきっていた。いや、自暴自棄だったんだ、もうどうなってもいい、いけるとこまでいってやると」

「そしてその報いがあの銃弾だったんだ。あれが僕の罪。あそこでクソ野郎から裁きを受けるはずだった……けれどあの時」

彼が節目がちだった顔をあげた。しかし病室の窓からの逆光で、その顔面は暗く、表情を見ることは出来ない。

「君が僕を守ってくれた」

何を言ってるんだ、こいつは。と素直に思った。そんなつもりはない。さっきだって何度も罵倒したというのに。私は望んでこうなったのではない、お前のせいだ、と。

「君が僕の罰。僕の罪。これからは君に償うために生きていく」

*

「君は僕がいなくちゃなんにもできないんだから」
「必要とされてる気分って最高」
「ずっと僕が看病してあげるから」

繰り返される戯言。どれも私には“必要ないものである”。


SBRレースの受付でジャイロと出逢い、回転の秘密を探り、自分の足を治すために彼を追いかけようとするもジョニィに阻止される。でもなんやかんやでこっそりSBRに途中参加したりしなかったり。その上、旅の中でジャイロに惚れてしまったらもう救いようがない……。
ジョニィがマイナスを突き進みそうなお話。すごく昔にネタとして書いていたものをサルベージ。



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