地獄でもいいから連れてけ

ユーリ

シティだとかコモンズだとか、もうどうでもよくなってしまった。日に日に生きる気力も希望もすり減って、それでもから元気で這い上がるため頑張ってきたのに、ようやく到達したのが、こんなつまらない世界だったなんて。
騒ぎに便乗して暴動を起こす仲間達を横目に私はひとり佇んでいた。シンジには悪いけれど、もうこの世界になんの未練もない。しかし死にたくもない。

「私をそこに連れてって」

たまたま近くにいた少年に問いかけてみた。他の侵略者のように仮面はしていないが、一目見てこの世界の人間ではないと分かった。マントを翻してさも「面倒くさそう」に振り返る少年。どこかで見た顔をしているが気のせいだろう。彼とは初対面なのだ。別の世界の人間なのだ。そうでなければ、私が声をかけるはずもないのだから。ちなみに横にいたシンジの顔がすごい怖いことになっているけれど見ないフリをした。手を掴まれたような気もしたけれどすぐに振りほどいたため熱も残らない。そう、冷めてしまったのだ。今、私を熱くできるものはきっとこの世界には最早存在しない。

「何言ってんの。君みたいな雑魚に構ってる暇ないんだけど」
「連れてってよ、そっちの世界に」
「……君、馬鹿なの?」

誰かが私の名前を呼んでいたが、どうでもよかった。紫の彼の、その動く唇だけが今の私をわくわくさせていた。

「連れてくわけないでしょ」

だよね。救世主って面してないもん君。



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