LEGACY小噺(エジソン)

「日本には雷が鳴るとへそを取られるっていう話があるらしいよ」
「む、なんだねその科学的根拠もクソもないような話は」

 エジソンって時々口悪いよね、と思ったままのことを呟くと、君の前でかしこまる必要はないだろうと鼻を鳴らした。あまりに自然にそう告げるので、私は少しばかり怯んで右へと視線を逸らしてしまった。それは喜んでもいい事なのだろうか。彼の口からとんでもないスラングが飛び出す日は近いのかもしれない。そう思うと少しだけワクワクした。

「日本人なら皆知ってるくらい有名な話らしいよ。リツカに聞いたの」
「ふむ……由来が気になるところであるが、大方子供に向けた注意喚起的なものだろう」
「そこまでは聞いてないんだけど、逆にそれを聞いたちびっ子達が試してみたいとか言って雷使えるサーヴァントに当たって回ってるんだって」
「その内、私のところへも来るよ! ってことかな! いいとも、いつでも来るがいいさ!」
「ふふ、そういうところは博士と違うね」
「……あ? あのテスラが何だって?」
「いや、ちびっ子達が一番に向かったのがニコラ・テスラ博士のところだったの。でも彼、突然の襲来にたじたじで」
「ムムムッ! 雷といえは直流のこの私だというのにちびっ子めムム……」
「それはたまたま近くにいたからじゃないかな」

「まぁ、君のへそは私が守ってみせるとも!」
「いや、おへそくらい自分で守れるからいいよ……」
「ノリが悪いな」

 へそか。私のへその緒はどんな人に繋がってたんだろう。
 私は血の繋がった親の顔を知らない。全く記憶にもない。だからこそ、酷く恋しく思ったり悲しいと感じることもあまりないのだけど、
でもそんなことはもうどうでもいいのだ。私は今の家族で満足している。

「私のへそならいつでも持ってっていいから」

「自分の体は大切にするべきだ。誰かさんが怒り狂うぞ。もちろん私もね」
「その誰かさんが一番自分を大切にしてないじゃん」
「……それはそうだな」
「子供ってかわいいよねぇ、迷信を本気で信じちゃって」
「君も十分子供じゃないか。私にとっては素直で可愛らしい子供のなまえさ」
「……それ、私くらいの歳の女の子が一番気にする言葉だって知ってる?」

「ふむ……しかしなまえ君、そう言った迷信というものもあまり馬鹿にはできないぞ。冗談でも、持っていっていいだとか思うものじゃない」
「え?」
「へそ、というのは初めて聞いたがね。超常的な存在が何かを攫っていくというのはどこの国でもよくある話だ」
「そういえばアメリカにも迷信って色々あったよね。……あ、エジソンの時代にはあった? あの首無し――」
「……なまえ?」

「……大丈夫、ちょっと目眩がしただけ」




(いつか連載ページの方にもあげるかも)



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