燃えつきるほどヒート

「暑いんだけど」

 コイツすっごいこの世の全てに対する憎しみを籠めた瞳で見てくるんだけど、俺何もしてないよな?
 夏休みの宿題で手一杯な俺は「あっ……そう、だから何?」と視線だけで返事をする。やつはそれが気に食わなかったのだろうか。依然として真っ白なままのノートの上に、突然、バン!と拳を叩き付けた。

「暑いんだけど!」
「我慢しろよ」
「あ・つ・い・の!!」
「いって! 脛蹴るな!!」

 ガイとの特訓の成果なのかどうかは知らないが、コイツの蹴りはそこいらの男子よりも遥かに重い。ああ、これ確実に明日には青痣になるタイプの奴だと悟りつつ、後で辞書で「居候」の意味を確認しようと胸に誓った。すごくない?居候のはずなのに、何事も上から目線で、言動に感謝の「か」の字も見当たらないどころか、逆の方向にエスカレートしていくんだけど。エスカレーターを逆走する迷惑な客そのものなんだけど。ところで自分で言っておいてなんだがエスカレーターって何。

「そもそもお前等チャッカマン一族は暑いの好きなんじゃねぇのかよ。寒いよりはマシなんだろ? 裸足でコンクリート駆け回るくらいの根気見せろよな」
「オビト……暑い、と熱いで漢字も意味も違うの分かる? 私達が好きなのは炎の熱であって気温的な暑さじゃないんだよ……?」
「なんだその顔クソ腹立つ」
「……大体私達だってな、ぐす、火遁さえ使えりゃなぁ、こんな……こんな……」
「……こんな?」
「陰気くさい上に蒸し暑いうちはに寄生する必要もなかったんだよォ!!」
「ッてめえええええ!!」

 やっぱり寄生してる自覚はあったんだな!?血管が切れるような音が聞こえた気がした。(聞いたことないけど)。怒りのままにちょうど持っていた消しゴムを投げつけるも、それを読んでいたとでもいうのか、軽々と避けられてしまった。
 そういえばこいつ、先日の忍組み手であのカカシに一発蹴り入れてるの見たぞ。負けてたけど。もしかして体術においては俺より上なのでゎ……?つまり俺<チャッカマン<バカカシってコト。。もぅマジ無理。。。浅漬けにしょ。。。

 

*

 

「なんなんだようちは一族って! あんたら暑苦しいんだよ!」
「知らねェよ。それが好きで寄生してるんじゃねぇのかよお前等は。こんなうちはが好きなんだろ?いやならさっさと出てけよ」
「え……自分で好きとか言うのは引くわ……」
「お前……」

 一体うちはマダラはこんな畜生共のどこが気に入ったと言うんだろうか。可愛らしさの欠片もないんだけど。
庇護欲とかこれっぽっちも沸いてこないんだけど。

「そもそもうちは一族って、なんでみーんな夏でも全身真っ黒の服来てるの? 視界に入れることを身体が拒否するんだけど」
「そっ……れは否定できないけどよ……」

 常にチャッカマン持ってるお前の生態も俺からしたら「何で」だよ。と言いたいところだが、うちは一族の生態もよくよく考えればおかしいところがあるのを認めざるを得ない。これがぐうの音も出ないってやつだろうか。

「えっ否定しないんだ」
「俺はうちはの中でもまともな方だと自負してるからな」
「へぇ……確かに、ちょっとオビトは浮いてるよね。良くも悪くも」
「……まぁた火遁が使えないとか落ちこぼれとかそういう話か?」
「火遁使えないところは本当に使えないけど。でもそれ以外のところは好きだから、オビトはそのままで良いと思うよ」
「使えねーとかお前本当になにさ……えっ?」

 えっ?

「オビトでよかったと思ってる」

 ちょっとだけ顔が熱いのは、夏のせいだ、そうに違いない。……とかいうベタなオチで誤摩化すのはかっこわるいだろう。少女漫画じゃあるまいし、男なら、認めるべきところは認めるべきなのだ。だって「本気で」どきっとしてしまったから。そう、それは認める。悔しいけれど認めてやろう。事実が塵と化して消えかけていたけれど、チャッカマンだって、一応女なのだから。

「寄生先が」
「ですよね」

 でも一瞬で冷めたからこれはノーカンでよくね?