トンネルを抜けると

「イタチくんー! 久しぶり!」
「お久しぶりですチャッカマンさん。ところで今回はどこから入りましたか?」

 ここ暁のアジトなんですけどね。以前はアジトではなく宿泊していた宿を(彼女曰く炎センサーによって)突き止められた訳だが、まさかもう、二回目のきまぐれチャレンジでアジトに直行してくるとは思いもしなかった。

「木の葉から土を掘り進めてわざわざここまでやってきたよ」
「でしょうね」

 彼女は至極当たり前のように言ってのけた。再度言うがここは暁のアジトである。勿論、一般人はおろか上忍クラスの忍びですら簡単に足を踏み入れられるような場所ではない。なのに居る。目の前の彼女は幻術ではないのかと一瞬この俺が疑ってしまうほどの違和感。しかし、右手にチャッカマン、左手に木の枝を持って何時もの通り笑っている彼女を見て、その笑顔で、紛れもなく本物であることを悟る。はじめて見る構えだが、どういう二刀流剣術なんだろうか。
 彼女は今度こそちゃんと入り口の穴を埋めてきただろうか。以前は俺と鬼鮫が泊まっていた宿の前に大きな穴を空けられて店の主人が泣いていた。しかし今回はそれ以上だ。塹壕とかいうレベルではない。木の葉からアジトに直通トンネルとか流石の俺でも声をあげて笑ってしまう。じゃなかったリーダーが泣く。本来ならば埋めるべきなのだろうが、俺が埋める筋合いは無いな。何キロあると思っているのだ。むしろ何キロ掘り進めてきたんだ、この人は。
 放って置いてもいつかはゼツあたりに見つかるだろうし、見なかったことにしよう。というのは建前でサスケを覗きに行く時に使えるかもしれないからやはりこのままにしておこう。これで甘味も買いにいけ「土団子にしないよう気をつけてね」心を読まないでください心を。

「相変わらずセキュリティガバガバだねここ」
「女性がガバガバとか言わないでください」
「いや……それは流石にイタチくんが深読みし過ぎ……ひく……」
「……そうではなくて、ここのセキュリティがガバガバという訳では決してなく、ただ貴女がおかしいだけですよ」

 

*

 

「で、今回は何の用ですか。」
「そうそう風の噂で聞いたんだけど、イタチくん天照使えるんでしょ?」
「……まぁ」
「景気良く一発私に天照してくれない?」
「死にたいんですか?」

景気良く俺の目も死ぬんですが。

「お願い! この通り!先っぽだけでいいから!」
「だから女性がそういうこと言わないでください」
「そういうことってどういうこと?この枝を燃やして貰えるだけでいいんだけど」
「今回のは俺が悪かったです。貴女はそのままの貴女でいて下さい」

それでずっと枝を持っていたのか……。とことん方向性を間違えたファッションかと思っていた。この人のことだから真剣にやっているのかと。

「それにしても何故そんなに天照を……?」
「天照の炎って絶対に消えないんでしょ、しかも普通の炎よりあったかいんでしょう?うちはマダラ以上じゃん。暖をください」
「そうですね。でも相手を焼き殺すまで消えませんし俺の目に負担がかかるので駄目です。下手すると失明です」
「えっそうなの。流石に死にたくはないから、今回は諦めようかな」
「少しは俺の心配もしてくださいよ」