オーブンでブンする

「今日はアカデミー初登校日だ」
「学校にもチャッカマン持って行く気かよ」
「当然」
「火気厳禁だから没収」
「忍の卵が何言ってんだ。オビトだって火遁つかうで……あっ」
「やめろそのクソわざとらしい『しまった』っていう顔」

 かなしいかな、最早生活の一部となってしまったこのストレスのたまる会話に俺はひとりため息を吐く。
 今日は休み明けでついに、こいつのアカデミー初登校日となってしまった。本当の闘いはこれからだ!うちはオビト先生の次回作にご期待ください!
 いやいや俺はこんな所で終わるわけにはいかない。こいつをどうにかしてリンに近づけないようにしようと俺は固く胸に誓ったのだ。

「アカデミーかぁ。女の子いるかな」
「そりゃあな」
「そ、そっかぁ」

 何時もよりどこかそわそわしてる奴を見て、少しだけ優越感を感じたのは秘密である。いつもは向こうのペースに持っていかれてしまうが、今日は違う。立とうと思えばいつだって、俺が優位に立つことが出来る。その証拠に、いくら先に行けと言ってもこいつの足は動かないまんまだ。

「いいな、今日は特別だけど、明日からは登下校は別々だぜ。あと、頼むからアカデミーでお前ら一族の話はするんじゃねーぞ」

 聞いたところによると、うちはに預けられるまでこいつは今まで一族の輪から出たことが無かったらしい。年の近い子供も他にいなかったようで、見た通り随分と甘やかされ、何より変な常識を植え付けられてしまっている。俺も人のこといえた義理ではないが、こいつの場合はもっと深刻だ……と思う。特にうちはマダラに関しては。

「登下校はともかく、後者はなんでよ」
「てめーの事だからツルツルっとうちはマダラの名前を出しかねないからな」
「マダラ様はフッサフサだったと聞いているけど」
「いやそういう話じゃねーよ変なところに反応すんな」
「あの方の名前を出すのがなんでダメなの?名前を言ってはいけないあの人みたいな感じ?」
「お前はうちはマダラがどんな奴か知らねーから……。一回アカデミーで歴史勉強しろ!流石の俺でも知ってるぞそれくらい!」
「私の知ってるうちはマダラは優しくて強くて……何より暖かくて……最高のオーブンだよ」
「お前等って本当にたくましいよな」

でもうちははお前等の家電じゃねぇ。

*

 誰かに見られやしないかと、いつもと違うドキドキで登校した訳だが、いつも通り道に迷っているばあさんがいたから案内しているうちにいつも通りに遅刻してしまった。それで怒られたのはいいんだ、いつも通りだから。問題はあの女だ。あいつ、いつの間にかちゃっかり先に学校について何食わぬ顔でクラスメイトへのあいさつを済ませてやがった。家を出る前のあの態度は一体何だったんだ。興味津々のクラスメイトに囲まれるあいつから目を逸らし、癒しを求めて今日一日ずっとリンを見ていた。でもそれを見ていたゲンマにバカにされたからやっぱり今日はついてないと思う。

「オビト、私はじめて友達出来たんだぜ」

 俺より遅れて帰ってきたこいつは、靴を脱ぐなり腹立つ顔で自慢してきた。

「良かったじゃねぇか」
「うらやましかろ? うらやましかろ?」
「いや別に……。で、誰だ? ……ハッ、ま、まさかリンとか……」
「ガイっていうんだけど」
「珍獣」
「人間だよ、多分」
「いやそれは知ってる。そうか、男か……」

 色々突っ込みたいところはあるのだが、まず言いたいのはお前俺のことは一体なんだと思ってるんだっていうあの……いややっぱ(聞きたくないから)いいです。

「ガイの側いるとめっちゃ暖かいんだよね。あいつ凄いよ、自然発火する能力持ってるみたい」
「ああ、うん……そう」

 

 家電もどきとか思われてたら俺怒りでどうなるか。