歌だって歌う

「寒いよ~寒い~」
「おいもう春だぞ。それくらい我慢しろよ」
「お願いオビト~私のために火遁して~ぷり~ずかとんぷり~ず」
「お前のために払うチャクラは持ち合わせてねーよ」
「あ~心が寒い。うちは一族なのにすぐぽんと火遁してくれないなんて心が寒いよ~」
「だからうちは一族を何だと思ってんだお前等は!!」

「……本当は火遁使えないんじゃない?」
「……なんだよ」
「もしかして図星?」
「……」
「火遁が使えないうちはってどうなのさ」
「うるせぇ!! じゃあお前は何が出来んだよ!!」
「土遁……?」
「疑問系かよ!!」
「親戚のおじさん達はみーんな土遁使ってるよ。私もそのうち習うんだと思う。ほら、土も慣れればあったかいし」
「最後が理解できねーけど……。やっぱりお前だってまだ何にもできないじゃねーか! ブス!」
「顔は関係ねーだろ!! 表出ろ!! 私の芸術的な砂のお城見てからいえヘタレ!!」
「よし分かった出るぞ。今日こそ一発お前を殴る」
「よーし…………やっぱ外寒いからこの話は無しで」
「ふざけんな」

 

「しかし土遁ってあれだろ、図鑑で見たけど、泥みたいになったり、潜ったりする地味~な術ばっかなんだろ?」
「土遁を侮ることなかれ。一度埋められたことあるけど割とあったかいんだから」
「何をして埋められたのかは聞かないぞ、絶対に聞かないからな」
「うちの一族も、うちはから恩恵(暖)をもらえない時は渋々土にもぐって暖をとってたとかなんとか」
「お前等やっぱおかしい」

 

「まぁ火遁は勿論だけどよ! 風遁とか水遁もかっこいいよな! まだ実物は見たことねーけど……」
「ええ……水遁も風遁もやめたほうがいいよ」
「は? なんでだよ」
「だって術者が風邪ひいたりお腹壊すから」
「そんな事例は聞いたこともねーけど?」
「うちの一族が身をもって経験している」
「打たれ弱すぎだろチャッカマン一族……。でもお前等が崇拝する火遁だってな……たまに火傷するぜ」
「耐え忍ぶ忍であるなら火傷くらいで怯むわけないでしょ」
「数秒前に自分が言ったこともういっぺん言ってみろ」

*

「そういえば彼奴等……いつだったか、皆揃って地面に埋まっていたときがあってな。勿論顔は地上に出ていたが」
「ゼツか?」
「呼んだ?」
「いや呼んでない。悪い。しかし一族全員でそれやってんのか……きもちわる」
「拷問でもされているのかと思い、皆で引っこ抜いた記憶がある」
「ピクミンか?」
「理由がまた面白くてな。俺がいなかったから代わりに土で暖をとっていたんだと」
「(あれ……なんかそういえばそんな話あいつから聞いたことあるような気がする)」
「しょうがないから適当に土を燃やしてやったら砂風呂ならぬ土風呂だと大喜びでな。それからしばらくの間、後をついて回るように」
「ピクミンだ」
「今思えば、戦闘ではそこそこ使えるのに、あいつらはそれ以外が本当にぽんこつだった」
「むしろ戦闘では使えたことに驚きなんだが……というか今じゃなくて当時に気付いてほしかったです」
「使えたぞ。無駄に人数はいたからな……あの時代俺達の元に下るまでどう生き伸びてきたのかは謎だが……」
「あんたがいうなら、そうなんだろうが……にわかに信じ難いぜ」
「まずどんな命令でも黙って聞くし、小回りもきく、何よりあいつらは決して裏切らない。拷問されても口を割らない」
「……なんだ、割と普通に忍してたんだな」
「一族での連携が異様に強いのだ。数人集まればどんな物も運べるし壁だって壊せる。歌も歌うぞ」
「それピクミンでもできるんだよなぁ……」

おかしいな、全くけなげさを感じさせないどころかこんな図々しいピクミンははじめてだ。